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第11回 工務店のおもてなし術

更新日:2019/4/5

工務店に限った話ではありませんが、お客さんはもちろん、協力業者や取引先の営業担当者、弁護士さんや税理士さん、果てはOA機器のメンテナンス業者まで、会社にはさまざまな方が打ち合わせや商談に来られることと思います。

来社した方には、ごく短時間で済むような用事を除いて、お茶を出したりすることでしょう。時間帯によっては食事に行ったり、お酒を飲みに行ったりすることもあるかもしれません。つまり、何らかの「おもてなし」をしているはずです。今回は、工務店や職人さんらしい「おもてなし」の方法を考えてみたいと思います。

はじめに、とある工務店さんに出向いたときのエピソードを紹介しましょう。

まず事務所に行ったところ、モデルハウスがすぐ近くにあるのでそっちに行きましょう、ということになりました。モデルハウスに到着すると、社長さんがお茶を淹れてくれたのですが、なぜか社長さんの口から「すみませんね」の一言が。

その社長さんは、モデルハウスに自分で焙煎したコーヒー豆を常備しておき、お客さんと打ち合わせをするときなど、豆をその場で挽いて淹れたコーヒーを出すのだそうです。私がお邪魔したときは、たまたまコーヒー豆が切れていたのでいつも通りの応対ができない。そういうことから出た一言だったようです。

とはいえ、代わりにと出てきたお茶も珍しいもの(名前を失念してしまいました)で、カップもこだわりを感じさせる、洒落たデザインのものでした。その社長さんにとってはいつものことなのでしょうが、はたから見ればずいぶん手をかけているように思えます。

このエピソード、皆様はどうお感じになるでしょうか? 「ちょっと面倒そうだな」と思う方もいるかもしれません。しかし、工務店や職人さんのように、ものづくりに関わる人々にとってこのお話は、意外と自身の仕事へのスタンスを示すヒントが隠されているように思えるのです。

お客さんだって、いろいろな場でいろいろな応対をされているはず。目の前で社長が手間をかけて応対してくれていることに感激したり、その会社に対する満足度や信頼度が高まったりもするでしょう。

また、ものづくりを生業としている会社・人が、自社の商品となるもの(工務店や職人さんなら住宅)以外の部分にもこだわりを見せているということは、その会社や人がつくるものへのこだわりを窺わせることにもつながるように感じます。例えば、いつもおしゃれな服を着ている人がいたら、生活の他の部分もきっとおしゃれじゃないか――そう思いませんか? もちろん実態は必ずしもそうとは限りませんが、演出としては有効な手法といえるのではないでしょうか。

こだわりを見せることの有効性は、何もお客さんに対してだけではありません。一緒に仕事をする協力業者の方々に対しても、同じことが言えます。

例えば、ひと仕事終えてみんなで打ち上げをするとします。極端な例えになりますが、そこでカップ麺やコンビニ弁当を出されたらどう感じるでしょうか。相手に対して、あまりいい印象は持たないのではないかと思います。「手抜きだ」と思う人もいるかもしれません。

だからといって「仕事も手抜きでいいや」と思う職人さんはいないでしょう。しかし、その会社のものづくりへの姿勢とあまりにギャップがあった場合、仕事へのこだわりに対して抱く印象は変わるでしょう。現場以外でのこだわりの見せ方は、モチベーションや仕事の精度に、意外と影響するのです。

もちろん、お客さんのもてなし方と、協力業者などビジネスパートナーのもてなし方は違っていて然るべきです。もてなす人数だってかなり違うでしょうから、お客さんと全く同じようにもてなす必要はないと考えています。しかし、もてなし方に自社、あるいは自分のこだわりを混ぜることによって、仕事への理解を深めてもらったり、関係性をもっと良いものにすることは必ずできます。

お客さんにはお茶を出せばいい、仕事の打ち上げはお酒やお寿司があればいいだろう――それでも構わないのですが、よりよいものを、より楽しくつくっていくために、「おもてなし」を見直してみてはいかがでしょうか。

寄稿:A(住宅ジャーナリスト)

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