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第4回 建設キャリアアップシステムとは

更新日:2018/5/5

「建設キャリアアップシステム」の本格的な運用が、今年の秋から開始される予定です。登録申請の受付もそろそろ始まるようですが、今一つどんなものなのか、どんな影響があるのかピンとこないという職人さん―特に町場で働く方々―、工務店さんも多いかと思います。今回はこの「建設キャリアアップシステム」を取り上げてみましょう。

建設キャリアアップシステムを一言でいうと、「建設技能者の就業履歴や保有資格、講習の受講履歴などを、統一ルールのもとで蓄積していくシステム」です。技能者(職人)がこのシステムに登録すると、ICカード(キャリアアップカード)が交付され、現場に入場するときにこのカードを使って、新たな就業履歴(作業の内容など)を蓄積していくことになります。また、元請事業者も事業者登録を行い、現場ごとの情報をシステムに登録していくことが必要です。

国は初年度で100万人、5年後にはすべての技能者の登録を目指すとしていますが、今の段階では必要性を、さほど強くは感じない方もいるかもしれません。なぜこんなシステムができたのでしょうか。

日本の建設業界では、多くの建設技能者は下請として、さまざまな元請事業者の現場で働くのが、少なくとも野丁場では一般的です。雇用主で評価基準もまちまちなので、この職種で経験は〇年なら能力はこれぐらいのレベル――というような、統一的な評価がなされにくく、優れた能力を持つベテランであっても、賃金や立場には必ずしもそれが反映されないという問題があります。

また、技能者の賃金カーブはピークが40代と言われています。どんな職業でも経験を積めば、人をとりまとめる立場になったり、後進を指導したりするようになり、それなりに評価されるものですが、建設技能者はそうした評価よりも、技能労働ができるかどうか(=体力)が重視されてしまうのでしょう。歳を取ったら誰でも体が衰えますが、それだけで収入が下がるとなれば、技能者になることはリスクと思われるかもしれません。

そうではなく、「個々の技能者が、その有する技能と経験に応じた適正な評価や処遇を受けられる環境」を整えて、建設業の担い手、あるいはこれから担い手になろうとしている人々が安心して働けるようにしようというのが、建設キャリアアップシステムの狙いなのです。

では、具体的にはどのように技能者の能力が判断されるのでしょうか。国土交通省の建設技能者の能力評価のあり方に関する検討会(座長=蟹澤宏剛・芝浦工業大学教授)が3月に公表した中間とりまとめでは、システムに蓄積される資格や経験などの情報をもとにした「4段階のレベル」の評価法が提示されました。

基本的には、就業日数を就労点(仮称)、登録基幹技能者、技能検定などの資格を技能点(仮称)として、それぞれポイント化して評価します。就労点は就業日数に応じてポイントが加算されていき、資格取得や講習の受講、あるいは職長などの立場を加味して、さらにポイントを加点する仕組みです。

「4段階のレベル」は、▽レベル1=「見習い建設技能者(初級建設技能者)」▽レベル2=「一人前の建設技能者(中堅建設技能者)」▽レベル3=「職長として現場に従事することができる建設技能者(一定の職長経験を有する者)」▽レベル4=「高度なマネジメント能力を有する建設技能者(登録基幹技能者等)」――という区分で、技能検定がある職種では、レベル2は2級、レベル3は1級に合格していることを想定しています。なお、具体的な基準は、職種ごとの特性を考慮し、各専門工事業団体が策定します。

キャリアアップカードも、このレベルに応じて色違いのカードを交付する方針ですが、まずは普通のカードと、登録基幹技能者が対象の「ゴールドカード」で運用していくと見られます。

今後は、技能者一人ひとりの評価だけではなく、企業(専門工事業者)の施工能力を見える化することも検討課題として挙がっています。こういった能力評価が果たして定着するのか、問題が本当にないのかどうかはまだわかりませんが、職人さんたちが安心して働き、豊かに暮らしていけるようになることを願って、今回は筆をおくことにしましょう。

 

寄稿:A(住宅ジャーナリスト)

 

 

 

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