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第2回 プロとして“気づかせる”こと

更新日:2018/3/5

住宅内の大きな温度差によって起こる「ヒートショック」など、断熱性能が低く寒い住まいが居住者の健康に悪影響を及ぼすことは、ご存知の方も多いでしょう。自社をPRするとき、この問題を取り上げているという方もいらっしゃるのではないでしょうか?

1月25日には、(一社)サステナブル建築協会のスマートウェルネス住宅等推進調査委員会が「住宅の断熱化と居住者の健康への影響に関する調査」の第2回中間報告を行い、①起床時の室温の低下による血圧上昇への影響は、高齢になるほど大きい②室温の低い家に住む人ほど、起床時の血圧が高血圧となる確率が高い③室温の低い家に住む人ほど、動脈硬化指数と心電図異常所見が有意に多い④断熱改修後に起床時の血圧が有意に低下⑤就寝前の室温が低いほど、夜間頻尿リスクが有意に高い⑥断熱改修後に夜間頻尿回数が有意に減少――の6つの知見が得られつつある、と発表しました。

 

しばらく前まで、断熱は省エネルギー、光熱費削減と関連付けられることが多い話題でしたが、今や中心は健康、つまりノン・エナジー・ベネフィット(NEB)の要素になっていると言えるでしょう。

前置きが長くなりましたが、ここから本題です。

前述の「住宅の断熱化と居住者の健康への影響に関する調査」の記者発表でのできごとです。発表が終わり質疑応答に入ると「断熱というけれど、室温の問題なら暖房をもっと使えばいいのではないか」という質問が、一般紙の記者から出ました。

皆様はこの質問をどうお感じになりますか。「専門家として健康と住宅の断熱性能の関係は知っているが、専門知識のない消費者は知らなくても当たり前」。そう思う方もいらっしゃるでしょう。ですが、一般向けのメディアでも温度と健康の機会が取り沙汰される機会は増えている中、どうやら思ったほど知られていないらしいことは、個人的にショックなできごとではありました。

工務店(専門家)と施主(消費者)のギャップとしては、もうひとつ「四号特例」を挙げても良いかもしれません。施主は、構造上の安全性が計算で裏付けられていると思っていても、現実はそうではない。きちんと構造を考えて設計したつもりでも、思い込みなどが原因で、実は問題があるかもしれない――四号特例の存在が耐震性不足の住宅を生み出しているとして、見直しや廃止を求める意見もあります。

最近の施主は勉強している、自分より詳しく知っている、といった話を、工務店の方からしばしば聞きます。とはいえ、専門家に比べればアクセスしている情報の範囲が偏っていたり、理解も十分ではないかもしれません。そもそも知らないという人もいるでしょう。

知らない、気づかないままでは、施主が享受できたはずの利益を得られないことになります。さらには、重要なことなのに教えてくれなかった――と、自社の信頼や評判を落としてしまうことにもなりかねません。施主だけではなく、自分たちの利益にも関わることです。皆様には、専門家として重要な情報やその意味を伝え、その価値を施主に“気づかせる”ことに取り組みましょう。

寄稿:A(住宅ジャーナリスト)

 

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